環境科学国際センター > ココが知りたい埼玉の環境 > 「光化学スモッグ」って植物にも悪影響を及ぼすの?

ここから本文です。

 

掲載日:2018年1月15日

「光化学スモッグ」って植物にも悪影響を及ぼすの?

*この記事はニュースレター第15号(平成24年5月発行)に掲載したものです。

Question - 質問します

埼玉県は、全国でも有数の光化学スモッグ多発県だとききました。

光化学スモッグは、私たちの身体に悪い影響を及ぼすことは知っていますが、植物にも悪い影響を及ぼしているのでしょうか。

Answer - お答えします

自然環境担当 三輪 誠

たしかに埼玉県は、全国でも有数の光化学スモッグ多発県です。光化学スモッグは、目がチカチカする、息苦しい、吐き気がするなど、私たちの身体に悪い影響を及ぼすことはよく知られています。実際に、埼玉県では、そのような被害が報告されています。ところが、光化学スモッグは、私たちの身体だけではなく、植物にも悪い影響を及ぼしています。実は、私たちがそれに気がついていないだけで、埼玉県では、葉に発現する障害などとして、目に見える形で被害が現れています。また、光化学スモッグは、植物の成長を抑制するなど、私たちが実際には観察しにくい被害も引き起こしています。それでは、これから、光化学スモッグによる植物被害について、もう少し詳しく説明しましょう。

光化学スモッグの成分は?

そもそも、光化学スモッグは、どうして発生するのでしょうか。光化学スモッグが発生するしくみを図1に示します。実は、光化学スモッグの発生には、私たち人間の活動が大きく関わっています。人間による生産や物流などの活動が活発になると、工場や事業所、自動車などからの排気ガスとして、窒素酸化物や炭化水素が大量に放出されます。これらのガスは、太陽からの紫外線のエネルギーを受けて複雑な反応(いわゆる光化学反応)を起こし、光化学オキシダントと呼ばれる新たな大気汚染物質に変化します。とくに、春から夏にかけて、風が弱く晴れた日には、光化学オキシダントが大気中にたまり、その濃度が高くなってしまう状況となり、このとき遠くがかすんで見えることがあります。これを光化学スモッグと呼んでいます。

『光化学スモッグを構成する光化学オキシダントの大部分はオゾン(O3)であり、その他に、パーオキシアセチルナイトレイト(PAN)などがあります。これらのガス状の大気汚染物質が、私たち人間や植物に被害をもたらす主な原因となっています。

光化学スモッグが発生するしくみ

図1 光化学スモッグが発生するしくみ

光化学スモッグによる葉の可視被害

光化学スモッグが発生すると、どのような被害が生じるのでしょうか。私たち人間には、目がチカチカする・痛い、涙が出る、咳がでる、のどが痛いなどといった粘膜を刺激するような症状や、息苦しい、吐き気がする、頭が痛いなどといった症状として被害が現れます。このように、光化学スモッグは、私たちの健康を害するため、光化学スモッグ注意報が発令されているときは、できるだけ外出はひかえた方がよいといえます。

一方、植物は、動物に比べて、光化学スモッグに対する感受性が強いことが知られています。したがって、私たち人間に被害がでない程度の光化学オキシダント濃度でも、葉面に目に見える形で障害が現れたり、葉が落ちたりする被害が発現することがあります。とくに、アサガオ(図2)やサトイモ(図3)は、光化学オキシダントの主成分であるオゾンに対して感受性が強く、葉の表面に白色や褐色の斑点として被害を発現し、私たちにオゾンの影響が発生したことを教えてくれます。そのため、アサガオやサトイモは、オゾンの指標植物注1)としてよく知られています。また、とくにペチュニア(図4)は、PANに対して感受性が強く、葉の裏面に銀白色または青銅色の光沢斑として被害を発現し、私たちにPANの影響が発生したことを教えてくれます。そのため、ペチュニアは、PANの指標植物としてよく知られています。

アサガオのオゾン被害

図2 アサガオの葉の表面に発現したオゾン被害

サトイモのオゾン被害

図3 サトイモの葉の表面に発現したオゾン被害

ペチュニアのPan被害

図4 ペチュニアの葉の裏面に発現したPAN被害

注1)指標植物:ある特定の環境要因に対して敏感に反応し、その反応を何らかの現象として表す植物のことを指標植物といいます。例えば、アサガオは、オゾンに対して敏感に反応し、その反応を葉の表面に白色や褐色の斑点として表します。この場合、アサガオのことを、「オゾンの指標植物」といいます。

葉に被害が発現するしくみ

光化学スモッグにより、植物の葉に被害が発現するしくみは、どのようになっているのでしょうか。植物の葉には、気孔と呼ばれる小さな穴がたくさんあいています。そして、この穴は、周囲の環境条件に応じて、開いたり、閉じたりします。植物は、気孔の穴を開いて、大気中から二酸化炭素(CO2)を取り込み、光合成を行っています。光化学スモッグを構成する光化学オキシダント(オゾンやPAN)は、この気孔から二酸化炭素が取り込まれるのと一緒に、葉の中に取り込まれます。オゾンやPANは、酸化力が強いため、強い毒性があります。そのため、葉の中に入ったオゾンやPANは、葉の細胞にダメージを与え、葉の緑色のもとになっている葉緑素を壊します。これが、葉に被害が発現する原因となります

オゾンは、葉の中に取り込まれると、主に葉の柵状組織の細胞にダメージを与えます(図5)。そのため、オゾンによる被害は、主に葉の表面に発現します。一方、PANは、葉の中に取り込まれると、主に葉の海綿状組織の細胞にダメージを与えます(図6)。そのため、PANによる被害は、主に葉の裏面に発現します。しかしながら、なぜ、オゾンとPANによってダメージを与える細胞が異なるのかは、現在のところわかっていません。

オゾン被害葉の横断面

図5 オゾンによる被害を受けた葉の横断面図

〔大気汚染による植物被害写真集(2002)から引用〕

Pan被害葉の横断面

図6 PANによる被害を受けた葉の横断面図

〔大気汚染による植物被害写真集(2002)から引用〕

光化学スモッグが植物の成長に及ぼす影響

光化学スモッグは、植物の成長にも悪い影響を及ぼします。しかしながら、一般の環境下では対照となるものがないため、私たちは、この影響を観察することはできません。そこで、この影響を調べるために、オープントップチャンバー(OTC)という装置(図7)を使います。この装置は、フィルターを通して浄化した空気を導入したチャンバー(浄化空気区;対照区)と、野外空気をそのまま導入したチャンバー(野外空気区)の中で植物を育成することにより、両チャンバー間での成長差として、光化学スモッグの植物成長に及ぼす影響を捉えるための装置です。この装置を用いた実験により、場合によっては、浄化空気区と野外空気区との間で、目で確認できるほどの成長差が生じることもあります(図8)。

小型オープントップチャンバー

図7 小型オープントップチャンバー

〔左側のチャンバー:大気浄化区、右側のチャンバー:野外空気区〕

実験で確認された植物の成長差

図8 小型オープントップチャンバー実験でコマツナとタアサイに観察された成長差

お問い合わせ

環境部 環境科学国際センター 研究推進室 自然環境担当

郵便番号347-0115 埼玉県加須市上種足914 埼玉県環境科学国際センター

電話:0480-73-8370

ファックス:0480-70-2031

より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください

このページの情報は役に立ちましたか?

このページの情報は見つけやすかったですか?